不動産投資家の中で「メガ大家」と呼ばれる人たちがいます。
メガ大家の定義は不動産投資の投資規模が10億円を超える人とされています。
資産も知識も人柄も申し分のない尊敬すべきメガ大家さんがいる一方、残念ながらそうでないメガ大家さんも多いようです。
目次
人を否定するのは良くない
そもそも、私は人を否定するのが好きではありません。
なんのメリットも無いからです。
だから、この記事もあまり好き好んで書いてるわけではありません。
ただ、あまり儲かっていないのに「どうだ!スゴイだろ!」的なものが横行しています。
これは、古くからの「メガ大家」さんではなく、アベノミクスによる金融緩和で銀行の融資がユルユルなのを利用して規模を拡大したここ5年くらいで「メガ大家」になった人がすべてではありませんが、この傾向があります。
不動産投資があたかも打ち出の小槌のように
「簡単に儲かる」という誤解を
不動産投資初心者に与えるとしたら
誰かが警告する必要がある
かと思います。別に使命感に燃えてるわけでないのですが。
そこで、一部の「メガ大家」さんが本当に儲かっているかどうか、収支を中心に検証してみたいと思います。
特定の人を攻撃するのも良くないので、匿名といたします。
私の資産は10億円です!
そもそも資産規模でよく○○億円と言いますが、ほとんどの場合それは明らかにウソです。
現金買いしている人はいいのですが、ほぼ100%融資で物件を購入しているのに資産が○○億円という表現はウソです。
言うのであれば負債が○○億円と言うべきです。
バランスシート上、銀行の資産が○○億円という意味ならOKです。
要は融資で物件を買えば、ほとんどが銀行の資産なのです。
資産12億円、家賃収入1億円
あるメガ大家さんの事例です。
スペックはこんな感じです。
資産12億円、家賃収入1億円、ほとんどRC造。
築年数は15~25年くらいで。平均で築20年超。
ここからは、私の予測も含まれますが
融資期間は25年くらいか。
金利は0.8%くらいかな。
空室率は5%。
ぜんぜん儲かってないじゃん
不動産投資でちゃんと勉強している人は
上に挙げたスペックを見た瞬間、微妙だとわかるかと思います。
でも、そうでない人のために解説します。
収支シミュレーションの結果
収支シミュレーションはこちらのサイトを利用させていただきました。
一棟一棟のシミュレーションではなく
わかりやすくザックリと全体で計算します。
結果はいかに
ここで注目すべきは「年間手取り」の金額です。
約2700万円ですね。
これがキャッシュフローといわれてます。
ここだけ見るとそれなりに儲かっているように見えます。
正直、儲かっているように見える人はド素人ですね。
なぜなら、
税引き前のキャシュフロー
だからです。
それでは、税引き後のキャッシュフローの計算に移ります。
税金を考えてみましょう
当然のことながら規模からして
法人化しているでしょう。
実効税率は規模からして30%を超えるでしょう。
節税の手法はいろいろとあるかも知れません。
でも、不動産投資なんてほとんどガラス張りです。
悪いことをしない限り大幅な節税なんて難しいです。
とくに、規模が大きい場合は。
さて、税金の計算をザックリとします。
キャシュフローは約2700万円でした。
これに対して税金が・・・
と言うわけではありません。
なぜなら、ローン返済は経費になりません。
ローン返済に対しても、それがしっかり税務上の利益になっていれば税金がかかります。(当然ですが)
返済額はシミュレーション結果から年間約5300万円でしたね。
ここから先の記事に誤りがありました。ありがたいことにコメント欄からcue様からご指摘をいただきました。cue様のものが正確でわかりやすいのでそのまま引用させていただきます。
通常12億の投資なら建物比率を70%とし、
融資期間が残存年数とすれば、
年間の減価償却費は
建物価格=12億×70%=8.4億円
8.4億円÷30年=2800万円となります。元金返済は約4300万円、利息分は1000万円の返済ですね。経費は15%なので1500万円。
そうすると年間経費は
減価償却費2800万円+利息分1000万円+経費1500万円=5300万円。
利益は4700万円。
税金は30%なので
4700万円×30%=1410万円(コメント欄からご指摘いただいたcue様のコメントから引用)
法人税は年間1410万円ですね。
衝撃的結果のお知らせ
それでは、とても重要で本当に儲かっているかどうかがわかる
税引き後のキャッシュフロー
を計算してみましょう。
CF=利益4700万円-税金1410万円-元金4300万円+減価償却費2800万円=1790万
(コメント欄からご指摘いただいたcue様のコメントから引用)
12億円投資して
年間の手残りが1790万円です。
1790万円あれば十分やっていけそうになりますが、
20年超えRCは大規模修繕やエレベーター改修などで
1000万円単位の出費が想定されます。
12億円も投資(借金)して
年間1790万円はちょっと微妙な数字ですね。
最終的な純利回りは
1790/120000=1.5 % ですか。
この数字を見て何も感じない人は
不動産に手を出さないほうが・・・
収益率が低すぎる
そう言わざるを得ません。
正直、決して自慢話を披露しようという意図はないのですが、規模が10億よりもっと小さい私、ラジカル大家のほうがはるかに収益率は高いです。計算したら4倍くらいです。
要は、同じキャッシュフローを得るために、投資額は1/4くらいで済むということです。
銀行が融資をするから。
そう言う理由で物件を買い続け、低収益の物件をメガ的に増やしても低収益であることには変わりないのです。
得られるのは、
ハイリスクローリターン
なのです。
売上げだけでは食べていけません。
もう、もしかしたら寝てたほうがましかもしれません。
そう思いませんか。
考察
この記事の冒頭で、ここ5年くらいのアベノミクスによって急拡大したメガ大家さんは儲かっていない人もいると言いました。
もしかしたら、このあたりにカラクリがあるのかも知れません。
不動産投資は物件を買った初年度は個人法人を問わず、赤字になります。
物件を買うと、仲介手数料、火災保険、登録免許税、不動産取得税・・・等経費がかかるからです。
上で説明した税金を回避するために
実は強力で確実な方法があります。それは、
物件を買い続けることです。
物件を買うことで、確実に経費を大きくできます。
2年くらいは税金を納めないで済むでしょう。
毎年の税金を回避するためには
物件を買い続けなければなりません。
この記事を書いているうちに思い出してしまいました。
いつか見た光景を。
古い話ですがオークション詐欺で
チャリンカーと言われる詐欺師がいました。
ちょっと話が違いますが
自転車操業的な話なので通じるものがありますね。
物件を買うのをやめたらどうするのでしょうか。
訪れるデッドクロス
そもそも、築20年の物件ですから、普通に物件は老朽化します。
おそらく、利回り10%でも難しいのに
8%台ではまもなく訪れる修繕費とリフォーム代に圧迫されてながらも、返済分には容赦なく税金がかかるわけです。
早い段階でデッドクロスがくるかもしれません。
物件が値上がりして売り抜けられればいいのですが、それも考えにくいですね。
昨年よりも融資が厳しくなっているようですし。
さいごに
メガ大家さんと言ってもピンキリです。
尊敬すべき本物のメガ大家さんもいます。
ただ、今回収支計算したようなケースの大家さんはちょっとどうなっているか逆に教えて欲しいです。
どこにメリットがあるかを問い詰めたいです。
小一時間問い詰めたいです。
さいごに、みなさまにお願いがございます。
もし、いまこの文章をお読みになっている読者さまの中で、私が儲かっていないと説明したメガ大家さんのようなケースで、儲かる仕組みを知っているかたは、ぜひこの文章を下にスクロールするとメッセージ欄がありますので、ぜひ教えてください。反論でも結構です。
そして、もう一つ。
私はできるだけ多くの不動産投資家、特に初心者にこの文章を読んで欲しいと思っています。みなが目指すものがニセ「メガ大家」だとすれば不幸なことです。それを明らかにするためにもこのページを拡散していただけると一人でも不幸な人を減らすことができるのではと考えております。決してブログにアクセスが欲しいといったレベルの話でありません。ツイッター、フェイスブック、はてなブックマークなんでもOKですので。下のほうにボタンがあります。
コメント
建物の減価償却費が計算された上での2700万のCFではないのではありませんか?
通常12億の投資なら建物比率を70%とし、
融資期間が残存年数とすれば、
年間の減価償却費は
建物価格=12億×70%=8.4億円
8.4億円÷30年=2800万円となります。
元金返済は約4300万円、利息分は1000万円の返済ですね。経費は15%なので1500万円。
そうすると年間経費は
減価償却費2800万円+利息分1000万円+経費1500万円=5300万円。
利益は4700万円。
税金は30%なので
4700万円×30%=1410万円
CF=利益4700万円-税金1410万円-元金4300万円+減価償却費2800万円=1790万
12億も借金して2000万弱の年収が少ないと見るか、生活に十分と見るかは価値観次第だと思いますが、324万では無いと思いますよ。
cueさま
このたびは、コメントをいただきありがとうございます。
言い訳はしません。減価償却と金利を思いっきり間違えていました。
記事を正しく修正するため、いただいたコメントを引用させていただきます。
ご指摘ありがとうございます。
融資紹介も副収入になってるらしいですよ。
ttps://www.youtube.com/watch?v=C3lwoSRyVTk
はしめまして
記事とても参考になりました
この記事のケースでのcf1790万
これは法人の所得ですよね⁈
だとすると、自身の生活費などを
取る場合、給与として法人から個人にお金を移す必要があり、更に所得税を支払う必要があるという認識で間違いないでしょうか?
ちびたさま
はじめまして。
>だとすると、自身の生活費などを
>取る場合、給与として法人から個人に
>お金を移す必要があり、更に所得税を
>支払う必要があるという認識で間違いないでしょうか?
給与は経費となりますのでその分の法人税はかかりません。その代わり個人での所得となり所得税を支払うことになります。さらに個人の場合は住民税や社会保険料を支払う必要があります。
12億で1億の家賃ってのは少なすぎでは無いでしょうか?
私は5億で1億の家賃でしたが10億に行かず売却して1億のキャッシュを作って現在キャッシュ買いに変更しました。
1億の家賃収入でも手残りが少なかったので愕然としました。
平均利回り17%でも、返済20年とかでも手残りは大して無い。
なので路線変更してキャッシュ買い。30%物件を狙いに行ってます。
現金買いは最強です。
メガ大家にならずとも収益はかなりなものになりそうですね。
はじめまして。
詳細な記事素晴らしいです。
1.経費率について
私なら個別ではありますが築15年越の中古RCであれば空室率・経費率諸々含めて30%で見ます。
RCはなんと言っても固定資産税が木造とは比較にならない金額ですし。
安く買えば買うほど買値に対する割合は大きいです。
他にADや退去時の原状回復もありますが、古くなってきていると設備の刷新や間取りの変更で1室30万~のリフォーム費用が掛かることも多く、退去数によっては30%でも済みません。
空室・AD全て込みで20%で済むのは私の場合新築時の計算です。
2.購入に値する利回り
この記事を見せて頂いて逆に思ったのは表面11%だとそこそこになってきて、12%だと割とまともなのかなという感触です。
実際うちのRCがそうですが。
12%超えで返済比率40%以下で購入できると割とまともです。
3.RC10%でも問題ない目的
またあえてCFが多く出る物件を複利効果のために使うという割り切りでやっている方もいらっしゃいます。
また資産性がある場合も半ば利回りを無視する考え方もできます。
この場合極端な話もっと低い利回りでも肯定は可能です。
(私はやりませんが)
実際新築ラッシュに加えてこんな人達が今は多いのでやりにくいです。
4.最後に
やはりRC10%平均のみを買い進めてリタイア生活は私も危険だと思います。
記事で示してくれているようにトラブル対応ができません。
様々なジャンルや投資を組み合わせてもっと平均利回りが高くなければ。
それがよくわかる具体的な数値に落として頂きありがとうございます。
ストレージ大家さま
はじめまして。
いつも楽待のコラムを読ませていただいております。
詳細なコメントをありがとうございます。
いただいたコメントは、全般的に私と同じ感覚です。
>空室率・経費率諸々含めて30%
私も物件検討のときはこのくらいで見ています。
>表面11%だとそこそこになってきて、12%だと割とまともなのかなという感触です。
同意見です。
表面10%でもかなり微妙なのに、地方で築20年くらいのRCが8%の利回りで瞬間蒸発する現状をみて今回の記事を書くきっかけとなりました。
別ページに加藤隆さまからコメントをいただきました。
こちらのページの記事に対するコメントですのでこちらに転載します。
(このブログの仕様がわかりにくくて恐れ入ります)
以下転載です。
こんにちは。
加藤隆と申します。メガ大家が儲かっていないお話。共感します。
私も同様な事を感じており、不動産投資初心者が惑わされているのに危機感を持っています。
こんな啓蒙の記事が沢山の投資初心者に読んで頂けたら良いなあと思います。
尚、私も税引き後CFを計算できる千里眼なるツールを作り、それをベースにしたカモネギ脱出ゲームを開催して、少しでも不動産投資で不幸になる人を減らす活動をしています。
今後とも良い記事を掲載されることを期待しています。
加藤隆さま
こんにちは。
いつも建美家のコラムを読ませていただいております。
コメントをいただきありがとうございます。
>尚、私も税引き後CFを計算できる千里眼なるツールを作り、
>それをベースにしたカモネギ脱出ゲームを開催して、
>少しでも不動産投資で不幸になる人を減らす活動をしています。
「カモネギ脱出ゲーム」
ネーミングが最高にクールですね。しびれました。
税引き後CFがわかるそうで素晴らしいツールだと思います。
数年前に流行った「光速不動産投資」法、出口をどうするんだろうと考えていたのですが、見事に出口にうってつけの「メガ大家さん」というカモが見つかりましたね。
メガ大家さんは神。
安いときに仕込んで今売ってる人はそう思っていますね。私の周りにも。
コメントの採用ありがとうございます。
ストレージ大家さんのコメントにもありましたが、
メガ大家といわれる人たちにおいて、購入物件の平均利回りが8%しかない、
ということはありえないと思います。
この利回りでは債務超過となる可能性が高く、
不動産投資だけで12億も融資を引っ張ってくるのは事実上難しいでしょうね。
メガ大家といわれる人たちの規模であれば、
RCの築20年なら12%以上で購入されています。
(羨ましいことに買える人にはそういう物件情報がはいってくるんですよね)
私の周りにいるメガ大家さんで物件トータルでの
返済比率が40%超えている人はいません。
むしろ、危険なのはメガ大家の規模に至っていない似非コンサルタントとかで、
物件を5億前後、家賃収入5千万とかそのレベルの人ですね。
このあたりまでは例題の8%前後の物件でも融資がつく可能性がありますので。
それを自慢げに業者へ初心者を紹介してバックマージンとることが生業に
なってしまっているような似非コンサルタントがおり、
本まで出版されていることもあります。
また、8%の物件が全部CFがないかというとそうでもありません。
築年次第ですね。
築10年のRCを都銀で35年融資とかなら1億の物件で240万のCFですから、
まあまあかなといったところです。
築古高利回りとの組み合わせなどの中では、十分選択肢に入れてよいかと思います。
わくわくリッチさんのビログから飛んで来ました。
この記事を読んでも、サラリーマンは夢を見たがる生き物なので、
似非コンサルを信用してしまう方も多いでしょうね。
ここ最近では一番素晴らしい良文だと思います。
ありがとうございました。
本書いている人は対外嘘つきかなと思う。知り合いに往年の不動産投資家がいるから
税引き後のキャッシュフロー投資額の1.5パーセントあれば、投資効率は悪くないと思います。私の周囲にはいわゆるメガ大家の範疇に入る人が複数います。そうした人達のキャッシュフローは、だいたい1.5パーセントくらいです。修繕費、新築プレミアムからの家賃下落、金利上昇など、リスクはあります。よって、最近急拡大しているメガ大家さんは、5年後や10年後はキャッシュフロー1.5パーセントを切るでしょうね。しかし、それより前にうまく売り抜く事が出来れば、一回の売却で数千万円の利益が出ます。
全てを承知の上で投資規模を拡大するという選択肢はありだと思いますよ。
何を儲かっているとするかですね。
例えば、キャッシュフローとすると、例示のメガ家主は法人税を繰り延べていて、払っていなああ可能性が高いです。
要するに、購入経費を既に損金計上して、赤字にして、繰越金で利益をなくしていると思います。また、太陽光発電所の設備等を以前にして、一括償却をして繰越損を蓄えて、納税を繰り延べる手法をとる家主さんは沢山います。
また、わたしの友人の家主さんは自分の役員報酬を月に100万にして、利益を分散させています。家族が居るならば、家族に給料を払う人も居ます。全て合法な節税です。給与所得控除は人当分ありますから、有効にキャッシュフローを増やせます。
そもそも論として12億キャッシュを持っているなら不動産やらずに三菱UFJ銀行や住友商事の株を持って配当もらった方がお得です。
不動産投資の魅力は資金が少ない方がレバレッジをかけれる事が魅力だと思います。
1000万円キャッシュを持っている人が年利5%儲かったとして年間50万円しか儲かりません。しかし1000万円を頭金に1億円の不動産で5%運用すれば年間500万円儲かります。
だから不動産は良いと言う事ではないですが、投資とはリスクとリターンのバランスです。私の中では不動産はハイリスクミドルリターンと考えます。よってキャッシュを持たない人にとっては良い投資だと私は思います。
ただし間違っても不動産会社頼みの物件紹介や融資付けの不動産投資だけはやめるべきだと思っています。